これまでは、光子(電磁波)同士は通常の環境では基本的に衝突せず、お互いにすり抜けると考えられていました。

また光子同士が交差する状況では多くの場合「正面衝突」ではなく干渉波というシマシマ模様の新たな光のパターンを生成します。

この干渉パターンは光子同士の干渉によるものですが、衝突したわけではありません。

光子(電磁波)は物質粒子の間の力を伝える粒子であり、お互いの相互作用は極めて希薄だからです。

光子(電磁波)はさまざまな物質粒子と衝突を起こしたり複数の光子が一緒に移動することはありますが、光子同士の正面衝突は通常の環境ではまず起こりません。

しかし今回、ニューヨーク市立大学の研究者たちは、自分たちが開発した電磁波の時間反射を行わせる技術ならば、光子の正面衝突が可能ではないかと考えました。

発想のキッカケは、地震波や津波の研究でした。

地震波や津波のような波は、少なくとも理論的には、反対の周波数を持つ波を衝突させることで相殺したり弱めたりすることが可能です。

そのため過去の研究では人工的に発生させた振動で地震や津波の被害を軽減できるかどうかが検討されました。

結果、理論的には不可能ではないものの、実現するのは無理であることが判明します。

バイオリンの弦が作る音波くらいなら反対の周波数を持つ波を作ることができますが、地震や津波レベルで行うのは現実的ではなかったからです。

では逆に量子レベルの小さな波ならば可能なのでしょうか?

従来の常識であれば不可能だったのでしょう。

しかし研究者たちが過去に開発した時間反射を行う装置は、周波数が時間的に逆転した波を作ることができ、光子(電磁波)の正面衝突を起こせる可能性がありました。

そして実際に実験を行ってみたところ、光子(電磁波)同士が衝突を起こしていることが判明。

また装置を使って時間反射した電磁波の性質を制御してみたところ、新たに3種類の異なる衝突の形態が発見されました。

時間反射を調整すると光子の衝突パターンを制御できました
時間反射を調整すると光子の衝突パターンを制御できました / Credit:Hady Moussa . Observation of temporal reflection and broadband frequency translation at photonic time interfaces . Nature Physics (2023)