窮地だからこそできること

 被災後も昂大さんの活動は止まらない。輪島塗復興のために立ち上げたクラウドファンディングでは、全国から1億5,000万円(うち国内は8,000万円)もの支援を獲得。さらには視察に訪れた岸田文雄前総理との会談がきっかけとなり、田谷漆器店の輪島塗はバイデン前米国大統領への贈答品に選ばれた。

産業衰退、震災…それでも伝統産業を継いだ34歳が売上を拡大するワケ
(画像=岸田前総理がバイデン前大統領へ贈った輪島塗のカップ,『Business Journal』より 引用)

 「注目を浴びたことで、昨年の売上はむしろ例年より上がりました。ただ地震から1年経って更地も増えたし、輪島を離れる人もいる。輪島塗の状況は確実に深刻化していて、ここからが正念場だと思います。一方で故郷を立て直すために輪島に残ってくれる人もいる。苦しい状況だけど、今だからこそ創造的なことができるとも思う。だから皆んなにはいろんなことに挑戦しようと話していて、今後が楽しみな部分もあります。

 そもそも僕が入社した時には産業としてとっくに下り坂だったんです。でも、上り調子の時に貢献できることなんて少ししかない。下っているときだからこそ貢献できることがたくさんあるし、それが自分たちの存在価値になると思うんです」

 飄々としつつも大胆。5月には市内に輪島塗の工房を新設すると共に、誰でも宿泊可能なトレーラーハウスや能登の特産品が買える販売所などを併設した「輪島塗ビレッジ」を開設予定だ。

 「輪島塗をきっかけに集まった人が、楽しく遊べるような場所にしたいと思っています。目標は漆器を買いに世界中から輪島に人が来るような未来を創ること。お金もかかるし本当に人が来てくれるか今はめちゃくちゃ不安ですが、やっぱりちゃんと宣言しないと退路を断てないと思って、できるだけ人に言うようにしています。

 父が言ってたんです。先人たちが試行錯誤して紡いできた美しい日本の漆器文化を、次の世代に継承していくことが田谷漆器店の存在意義だって。自分も輪島塗の魅力を知っているからこそ、いろいろな方法でより多くの人に伝えていきたい。それが漆器で食べさせてもらってる人間の責務だと思っています」

産業衰退、震災…それでも伝統産業を継いだ34歳が売上を拡大するワケ
(画像=『Business Journal』より 引用)

(文=米津香保里/経営者の担当編集者)

提供元・Business Journal

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