しかし、従来のOCSを用いたとしても、完全に虚血を避けることは難しく、短時間でも血流が途切れてしまいます。
これに対して、NTUHのチームが開発した新しいOCSは、心臓を一切止めることなく、最初から最後までずっと拍動(心臓の動き)を保ったまま移植につなげるというもの。

このシステムは、体外式膜型人工肺(ECMO)から着想を得て設計され、心臓に絶え間なく酸素を含んだ血液を送り続ける仕組みになっています。
温度と圧力も適切に管理されており、手術室から手術室への移動中も心臓を動かしたまま安全に運べます。
この新しいシステムは、従来のOCSと同じ機能を持ちながら、さらに心臓を常に拍動させ続け、虚血を完全に回避するという点で進化した「次世代型OCS」とも呼べる存在です。
これにより、心筋細胞(心臓の筋肉の細胞)がダメージを受けず、最高の状態で移植できるのです。
では、新システムを用いた、世界初の「ゼロ虚血時間」心臓移植はどうなったのでしょうか。
世界初の「ノンストップ鼓動」心臓移植が成功する!ゼロ虚血時間を達成!
さて、実際に「ゼロ虚血時間心臓移植」を受けた患者さんについて見てみましょう。
手術を受けたのは49歳の女性で、拡張型心筋症(心臓の筋肉が薄くなり、拡張して収縮力が低下する病気)を患っていました。
彼女には新しいOCSを使って移植手術が施されました。
後の記者会見で公開されたビデオでは、ドナーの心臓が新OCSに接続される様子が映し出されました。
摘出された心臓は、女性患者が移植を待つ別の手術室に運ばれる間も、鼓動を続けていました。
そして結果は驚くほど良好でした。
手術後、心臓の拍動は力強く安定しており、心筋機能も早期に回復し始めました。
