「心臓移植」といえば、一度止まった心臓を新しい体に入れ替え、再び動かすイメージを持っている人が多いでしょう。
しかし今回、国立台湾大学病院(NTUH)のチームが成功させた手術は、過去の心臓移植とは決定的に異なりました。
2024年末に手術が行われ、2025年3月25日に記念すべき発表が行われました。
なんと、心臓の鼓動を1度も止めることなく、動き続けたまま別の人に移植する「ゼロ虚血時間移植」に成功したのです。
一体どうやって、そのような技術を実現したのでしょうか?
研究の詳細は、2025年4月9日付の『Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Techniques(PDF)』誌に掲載されています。
目次
- 心臓に血液が届かなくなる「虚血」――目指すは「ゼロ虚血時間」
- 世界初の「ノンストップ鼓動」心臓移植が成功する!ゼロ虚血時間を達成!
心臓に血液が届かなくなる「虚血」――目指すは「ゼロ虚血時間」
心臓移植は1967年に初めて成功し、以来大きく発展してきました。
しかし、その中でも問題となってきたのは「虚血」でした。
「虚血(きょけつ)」とは、臓器に十分な血液が届かなくなり、酸素や栄養が不足してしまう状態のことです。
血液は臓器を生かすためのエネルギー源なので、流れが止まると細胞がすぐに傷み始めてしまいます。

心臓はとてもエネルギーを使う臓器なので、ほんの少しでも血液が止まるとダメージを受けてしまいます。
一般的な心臓移植では、虚血時間が通常4時間以内に抑えられますが、それでも短ければ短いほど心筋へのダメージが減り、移植の成功率や心機能の回復が高まるとされています。
現代では「Organ Care System(OCS)」という特別な装置を使って、心臓を体温に近い温度で守りながら輸送することができます。