しかし大半の人間は平均的な能力に収まる凡人であることを考えると、自分と同じ土俵(学歴・職歴・年齢など)にいるライバルと比較して、どれだけ成果を出せるかだ。同じレベル感のライバル間における努力なら、類まれなる才能などなくても、努力した分は明確に差をつけることができるだろう。

名言負けしている人

ビジネスの現場では、名言や格言を引用する人がいる。たとえば、

「君はもっと挑戦するべきだ! ほら、孫正義さんも言っているじゃないか。“最大のリスクは、リスクを取らないことだ”ってね」

言っていること自体は素晴らしい。だが、もしこれを語る本人が過去にリスクテイクの実績がなかったとしたら、この言葉は途端に空虚になる。

名言は本来、歴史に名を残す重鎮による本質的な重い言葉のはずだ。しかし、その重い名言を軽くいうからそのギャップを感じて「お前がいうな」と思わせてしまうのだ。

軽々しく名言を言う人は「他人の言葉を借りて自分を大きく見せようとしている」という印象を与えてしまう。重い言葉は重い人が言わなければ軽く伝わってしまうのだ。

抽象的でリアルさがない

議論をしたときに相手からの反論で

「まあ、人それぞれだからね」 「絶対的な正解なんてないよね」

と回答が返ってくることがある。これらは一見、多様性を尊重する発言に聞こえる。しかし、具体的な意見を求められた場でこれを繰り返されると、「思考停止」と見透かされてしまう。

一体、抽象的なことしか言えないことは何が問題なのか?その理由は「そもそも言う必要が全くないから」である。「人それぞれ」「正解はない」などは言われるまでもなく、誰もが分かっている。議論における意見とは、正解そのものではなくあくまで価値観の1つに過ぎない。

意見に対するカウンターはまた別の意見であるべきだろう。多面的な視点で議論を交わすからこそ、お互いに異なる視点の価値交換が実現するというもの。