ブラジル北東部の沖合約70kmに浮かぶアブロルホス諸島。その中の一つ、サンタ・バルバラ島で、科学者たちが首をかしげる不可解な現象が起きていた。なんと、ヤギの群れが2世紀以上にわたり、明確な真水の水源がないにも関わらず生き延び、さらには繁殖までしてきたというのだ。一体どうやって彼らは過酷な環境を生き抜いてきたのだろうか?

植民時代の置き土産? 謎多きヤギの起源

 このヤギたちが、いつ、どのようにしてサンタ・バルバラ島にやって来たのか、正確な経緯は分かっていない。しかし、科学者たちは、植民地時代に入植者たちによって持ち込まれ、その後置き去りにされた家畜の末裔ではないかと考えている。ヤギや豚、鶏といった家畜は、当時の入植者にとって信頼できる食料源だったが、植民が失敗に終わるとしばしば島に残されたのだ。サンタ・バルバラ島におけるヤギの存在は、記録によれば250年以上前から確認されている。驚くべきは、この小さな火山島には知られている限り真水の水源が存在しないという点だ。

 この「不都合な真実」にもかかわらず、ヤギたちは乾燥し風の強い島でたくましく生き延び、数を増やしていった。しかし、その繁殖力ゆえに、島の固有の動植物、特にこの地域で繁殖する7種の海鳥の生態系を脅かす存在となってしまった。