このメチルフェニデートを扱った商品には、『リタリン』や『コンサータ』があります。

リタリンはかつて日本でもADHD治療に使用されていましたが、乱用や依存症の問題が多発したため、現在は原則としてナルコレプシー(睡眠障害)への使用に限定されています。

画像
コンサータ / Credit:Wikipedia Commons

コンサータ(メチルフェニデート徐放性)は医師の処方を通じて、ADHD治療に使用されています。

ちなみにアメリカなど海外ではリタリンもADHDの治療薬として一般的に使用されています。

しかし、こうした薬が「ある人にはよく効くのに、別の人には全く効かない」という現象が報告され続けてきました。

その原因は長年不明でしたが、今回ついにその「脳の中の違い」が明らかにされたのです。

ADHD薬が効くかどうかは”受容体のバランス”次第だった!

メリーランド大学医学部の研究チームは、健康な大人37名を対象に、メチルフェニデート(リタリン)を投与した状態と、偽薬を投与した状態の2回に分けて脳の画像を撮影しました。

このように健康な被験者を使った理由は、まず健常な脳の中で薬がどう作用するかを明確にし、そのうえで個人差の要因を探るためです。

ADHDの診断がある人の脳には多くのバリエーションがあるため、最初のステップとして健常者で統一された条件を確保する必要がありました。

使われたのは、PETスキャンやfMRIといった、薬剤の分布や、細胞・脳の活動を詳細に観察できる最先端の機器です。

画像
ドーパミン受容体の分布を確認 / Credit:Canva

研究の焦点は、薬を飲んだときにドーパミンがどれくらい増えるかではなく、もともと脳内にあるドーパミン受容体の種類とその分布バランスを分析することにありました。

ドーパミン受容体には、D1からD5まで5種類存在しており、D1とD2が主に注意力と関連しています。

D1受容体は集中すべき情報を強調する役割を持ち、D2受容体は余計な情報を遮断する役割を持っています。