「ゴーストフライト」と「ありえない着陸」

■ヘリオス航空522便墜落事故(2005年)

【世界を震撼させた航空機事故File】9.11、ゴーストフライト、“ファイナル・デスティネーション”的事故まで
(画像=画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

キプロスからプラハへ向かっていたヘリオス航空522便(ボーイング737-300型機、愛称オリンピア)は、ギリシャのグラマティコ近郊の丘陵地帯に墜落し、乗客乗員121名全員が死亡した。墜落前、同機は約3万5千フィートの上空で自動操縦により旋回を続け、1時間以上にわたって管制塔との交信が途絶えていた。

 異常事態にギリシャ空軍のF16戦闘機2機が緊急発進し、状況を確認。戦闘機のパイロットが見たのは、機長席は空席で、副操縦士は意識を失いコントロールパネルに突っ伏している姿だった。客室では酸素マスクがぶら下がっていたが、乗客は全員動かない状態だったという。原因は離陸前の点検時に与圧システムのスイッチが「手動」に切り替えられたままになっていたことだった。飛行機が高度を上げるにつれて機内の気圧と酸素濃度が低下し、乗員乗客は意識を失ってしまったのだ。まさに「ゴーストフライト(幽霊飛行)」と呼ぶにふさわしい悲劇だった。最終的に燃料が尽き、機体は墜落した。

■ユナイテッド航空232便不時着事故(1989年)

【世界を震撼させた航空機事故File】9.11、ゴーストフライト、“ファイナル・デスティネーション”的事故まで
(画像=画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

 シカゴへ向かっていたユナイテッド航空232便は、飛行中に第2エンジンのファンディスクが破損し、油圧系統がすべて破壊され、飛行制御が完全に不能となる絶望的な状況に陥った。しかし、機長をはじめとするクルーたちは驚異的な操縦技術と連携(クルー・リソース・マネジメント、CRM)を発揮。飛行機の進行方向をエンジンの推力調整のみで制御し、アイオワ州のスー・ゲートウェイ空港への不時着を試みた。機体は大破・炎上したものの、乗客乗員296名のうち184名が生還した(死者112名)。事故後のシミュレーションでは、経験豊富なテストパイロットでさえ生還可能な着陸を再現できなかったことから、この事例は「ありえない着陸(The Impossible Landing)」として航空史に残っている。事故原因はエンジン製造時の微細な欠陥が見逃されていたことだった。