「スマートフォンばかり使っていると脳が退化する」
そんな心配を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし最新の研究はむしろ逆の可能性を示しています。
米ベイラー大学(Baylor University)の研究チームは最近、世界中の高齢者約41万人のデータを分析した結果、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器を日常的に使っている高齢者ほど、認知機能の低下が遅くなっていることを発見したのです。
一体なぜでしょうか?
研究の詳細は2025年4月14日付で科学雑誌『Nature Human Behaviour』に掲載されています。
目次
- デジタル機器を使うと脳は健康になる?
- なぜ認知機能の低下が防がれたのか?
デジタル機器を使うと脳は健康になる?
高齢者がスマートフォンやパソコンを使う光景は、今や日常的になりました。
ビデオ通話で孫と話したり、地図アプリで道順を確認したり、リマインダーで薬の時間を管理したりと、便利な機能が生活に役立っています。
一方で、「スマホ漬け」「スクリーンタイムが長いと認知症になる」などといった不安も根強くあります。
実際、SNSなどでは「デジタル認知症」とか「スマホ認知症」といった言葉も広がっています。
これらはデジタル機器の過度な使用によって引き起こされる認知機能の障害のことです。
しかし今回の研究はこれらの通説を覆すものでした。

研究チームは今回、世界中の高齢者を対象にした136本の論文を精査し、そのうち57件の研究から得られたデータを統合。
対象者は合計41万1430人で、平均年齢は約69歳、追跡期間は平均6年から最長18年に及びました。
その結果、デジタル機器を日常的によく使用している高齢者は、そうでない人に比べて、認知機能障害の発症リスクが最大58%も低く、認知機能の低下速度も26%遅いことが判明したのです。
さらにこの傾向は、性別や年齢、教育歴、健康状態、社会的支援の有無などを調整した後でも有意に保たれました。