過度な自信に基づく批判や攻撃が積み重なると、SNS上での議論は建設的な議論どころか、深刻な罵り合いや敵意の増幅につながりやすい。

そして、いったん感情的な溝が生まれてしまうと、時間が経つにつれ対立はますます根強くなってしまう――研究者たちは、そうした悪循環を断ち切る方法を模索することが、社会の分断を食い止めるカギではないかと指摘しています。

まとめ:オンライン対立の止血策は謙虚さと事実確認

自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明
自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明 / Credit:Canva

今回の研究が示唆するのは、「議論を増やせば分断が解消される」という一般的な期待が、必ずしも現実には当てはまらない可能性があるという点です。

むしろ、自分の政治知識を過剰に信じ込んでいる人たちは、反対意見を聞けば聞くほど攻撃的な反応を示し、その結果、かえって感情的な対立を深めるリスクがあることがわかりました。

言い換えれば、“よかれと思って議論の場を広げても、参加者の認知バイアスによっては火に油を注ぐ”状況が起こり得るのです。

このような現象は、以前から社会心理学の分野で「確証バイアス」や「選択的接触」と呼ばれ、議論の最中に自分の信念を確認する情報ばかりを選択し、都合の悪い事実には耳をふさぐ傾向として報告されてきました。

今回の調査結果は、そうした傾向をさらに強める要因として「自分の知識を過大評価する心理」が大きく影響しているかもしれないことを示唆しています。

たとえば、一部の研究では、オンライン上で自信たっぷりに政治的意見を述べる人ほど、実は論拠が不十分な“似非ニュース”に踊らされやすい傾向があるというデータも出ています。

さらに興味深いのは、今回の調査において「自分はまだ勉強不足かもしれない」という謙虚さを持つ人が、異なる意見を受け入れる柔軟性を示した点です。

たとえば他の研究でも、「知的謙虚さ」の度合いが高い人ほどSNS上の政治的討論で相手の主張を一旦受け止め、補足情報を探す行動をとりやすいという結果が見られています。