本来ならば、さまざまな立場の人と話すことは互いの理解を深めるはずでした。しかし現実には、ネット上の議論が罵り合いや人格攻撃に転じ、感情的な対立(アフェクティブ・ポラライゼーション)がますます深まる光景を目にします。

これは例えるなら、運転経験が浅いのに「自分は運転の天才だ」と思い込んでスピードを出しすぎ、ブレーキのタイミングもわからず事故を起こすようなもの。

過度な自信が招く“見誤り”は、他者への攻撃だけでなく、自らの評価を正しくできないという点でも危ういのです。

そしてこうした「自分の確信が間違っているかもしれない」という視点が欠落すると、政治以外の領域でも大きなリスクが生まれます。

こうして見えてくるのは、「自分が知らないことを知らない」という認知の限界が、社会の様々な場面で対立や誤認を引き起こしている可能性です。

民主主義の基本にあるはずの“多様な意見交換”が過熱した対立の火種になるのも、犯罪捜査が誤った疑いを生み人権侵害に繋がるのも、その背景には往々にして「過度な自信」や「知識の欠如」が隠れています。

そこで今回研究者たちは、「政治におけるDunning-Kruger効果がオンライン上での議論や対立構造にどのような影響を及ぼすのか」を検証することにしました。

1,200人調査で判明:過信する人ほど対立が深まるワケ

自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明
自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明 / Credit:Canva

研究者たちはまず、韓国の一般市民約1,200名を対象にオンライン調査を行いました(最終的に第1波で1,175名が回答し、第2波でも948名が継続回答)。

この調査では、政治知識に関する10問程度のクイズを用意し、その正答率を“実際の知識レベル”とみなしました。

ところが、その平均正答率は約48%にとどまったのにもかかわらず、参加者のうちおよそ6割が「自分は平均以上に政治に詳しい」と回答していたのです。