パラキサンチンやカフェインに慣れた体でも、1-MXという新たな刺激が効果を発揮し得るのではないかという指摘もあります。
なぜそうなるのか詳細なメカニズムはまだ推測段階ですが、1-MXは比較的短い時間で作用し、耐性による効果の減退が起きにくい可能性があるとも言われています。
若いラットでより顕著に効果が見られたのは、神経の可塑性が高いからだと考えられますし、老齢ラットであっても十分に改善が見られたというのは大きな成果でしょう。
とはいえ、これは動物実験での成果です。
人間の体は動物より複雑であり、1-MXの長期的な安全性や摂取量の最適バランスなど、未知の点も数多く残されています。
さらなる検証が必要ですが、もしヒトでも同様の効果が確認されれば、朝のコーヒーが思っている以上に私たちの脳を支えているのかもしれません。
今後は女性の個体や脳の特定領域ごとの変化に注目するなど、研究のすそ野が広がりそうです。
コーヒーやお茶から生まれる「次なる秘密兵器」として、1-MXの可能性には多くの科学者が熱い視線を注いでいます。
サプリメントや食品への応用など、多方面への展開が期待できる点も魅力的です。
1-MXが私たちの記憶力や脳の健康をどう変えていくのか――引き続き研究の進展が待たれます。
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元論文
1-Methylxanthine enhances memory and neurotransmitter levels
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0313486
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。