また、1-MXはカフェインの主な代謝産物であるパラキサンチンからさらに変換される物質ですが、パラキサンチンや1-MXは主に速やかに体内から排出されるため、慢性的な蓄積による副作用が生じにくいと考えられています。

一方、カフェイン自体は長期あるいは過剰摂取によって、心拍数の増加、興奮、不眠、場合によっては不安感や消化器系のトラブルなどの副作用が現れることが知られています。

これらの事実から1-MXのサプリなどが発売されればカフェインを飲むよりも安全で、カフェインの座を奪うような存在になると期待されると言えます。

ただし、これらの知見は主にラットモデルで得られたものであり、人間における1-MXの安全性や副作用プロファイルについては、今後さらなる臨床試験や長期的な研究が必要となるでしょう。

研究者たちにとっても、予想以上に多面的な効果が示された点は、大きな驚きだったかもしれません。

1-MXを投与されたラットは、学習・記憶力の向上だけでなく、神経伝達物質や抗酸化機能まで強化されていたのです。

若いラットはもともと高い学習力をさらに伸ばし、老齢ラットは衰えかけた脳機能を引き上げられたというわけで、非常にインパクトのある結果と言えそうです。

脳の全面サポート?1-MXが見せる多面的な可能性

脳の全面サポート?1-MXが見せる多面的な可能性
脳の全面サポート?1-MXが見せる多面的な可能性 / Credit:Canva

今回の結果から見えてくるのは、1-MXが脳内の広範囲なシステムを支えている可能性があるということです。

実際、アセチルコリン、ドーパミン、GABAといった幅広い神経伝達物質が増加し、脳の活性度がバランスよく上がった印象を受けます。

さらにグルタチオンやカタラーゼといった抗酸化物質が増え、BDNF(脳由来神経栄養因子)も上昇、アミロイドβ(1–40)の減少が見られたことから、年齢とともにサビやすくなる脳を守り、柔軟に保つ作用が見え隠れしているようです。