短期的には起きにくいが、中長期的には起こり得る。 理由は、日本の財政は表面上持ちこたえているものの、低金利依存・高債務体質であるため、金利急騰や信用不安が起きれば類似のショックは十分にあり得る。
トラス・ショックとは何だったのか?
2022年、イギリスのトラス政権が発足直後に減税と財政支出の大幅拡大を打ち出した。 財源の裏付けが乏しく、かつイングランド銀行がインフレ抑制のため金融引き締め中だったため、市場が恐怖。 結果:
英ポンドが急落 英国債が暴落(金利急騰) 年金基金などの運用機関がパニック売り 政権がわずか44日で崩壊
日本との比較:共通点と相違点
項目 日本 トラス政権(英) コメント
政府債務水準 非常に高い(GDP比260%超) 高いが日本よりは低い 財政リスクはむしろ日本が大きい
中銀の姿勢 長期的に低金利政策(YCC)を維持 金融引き締め中(インフレ対応) 日本はまだ「安心感」あり
通貨の信用 円は経常黒字国通貨・安全資産扱い ポンドは投機的に売られやすい 一時的な円安はあるが、パニック売りは少ない
金融市場の反応性 相対的に粘着性が高い すぐに反応し暴落 日本市場は政治リスクにやや鈍感
⚠ 起こるとしたらどんな条件か?
以下のような条件が重なった場合、日本でも「トラス・ショック的」事態はあり得ます:
減税や給付金などで巨額の赤字国債発行 → 投資家の需給不安と「日銀の買わない国債」増加 国際的な信用低下(例:円の売り加速、格下げなど) 年金・保険・地銀などの金融機関が国債リスクに巻き込まれる → 連鎖的売り(ロスカット連鎖)
現状の「防波堤」
日本は現時点で:
国債の90%以上を国内投資家が保有 経常収支黒字(=外貨準備余裕) 日銀が国債市場の最後の買い手(準財政ファイナンス状態)
したがって、すぐに暴落には至らない構造ですが、それは「構造的な脆弱性を覆い隠している」だけともいえます。
総括
判断 内容
起きる可能性 中長期的には十分ある(特に利上げ局面や信用失墜時)
現時点のリスク 低金利政策と国内消化体制により抑え込まれている
重要な教訓 トラス・ショックは「市場は国家財政の整合性を見ている」という警告