そうした活動の中で発見されたのが、今回の1300年前のスキー板です。

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1300年前のスキー板が発見される。過去に発見されたスキー板と対になるもの / Credit:Secrets of the Ice

この発見の舞台は、ノルウェー中部のディゲルヴァルデン山(Digervarden Mountain)です。

ここでは2014年に約1300年前の片方のスキー板が発見されており、今回発見されたもう一方の板と見事に一致しました。

このスキー板は長さ約187cm、幅約17cmで、革製のストラップや木の繊維、接合部の細部に至るまで極めて良好な保存状態を保っています。

当時の人々が、過酷な冬の高地環境での移動や狩猟に備えて高度な道具を用いていたことが、この遺物からはっきりと読み取れるのです。

この発見について、「Secrets of the Ice」プロジェクトの共同ディレクターであるラース・ホルガー・ピロー氏は「私たちが過去に見つけたどのスキー板よりも状態が良く、完全な形で発見されたことに驚いています」と語っています。

では、この発見から私たちは何を学ぶことができるのでしょうか?

スキー板から垣間見る「寒冷化に対する人類の適応」

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気候変動が新たな歴史資料の扉を開いている / Credit:Secrets of the Ice

発見されたスキー板から学べることのひとつは、気候変動が新たな歴史資料の扉を開いているという皮肉な現実です。

氷河の融解によって、長年封じられていた過去の人類の営みが次々と明らかになっています。

狩猟具や衣服の断片、道具、そして今回のようなスキー板が姿を現し、考古学に革命をもたらしているのです。

特に今回のように、左右セットでのスキー板の発見は極めて珍しく、使用法や技術的背景を推定する上で非常に貴重な資料となります。

さらに、このスキー板が使われていたと考えられる時期は、後期古代小氷期(約紀元535年〜660年)に当たります。