「識学」というマネジメント理論に基づけば、部下が+αの仕事をしないのは「上司が何を求めているか」を明確に理解できていないからです。

上司が求める+αの仕事はあくまで「自分が求めていることの延長線上の仕事」でなくてはなりません。もし「自分が想像もつかないような何か」を期待しているのであれば、それは結局「自分が何を求めているか」を明確に示すという上司の機能を放棄しているのと同じです。

「自分が想像もつかないような何か」を部下に期待するというのは、部下が自分で目標を設定し、部下の判断基準で仕事をするということです。これを求めたり、評価したりすれば、組織の正常なあり方が保てなくなります。

組織における上司の機能は「自分が何を求めているか」を明確に示し、それに対して部下が出した結果を評価することです。このとき、+αの仕事とは「上司が何を求めているか」を100%達成したうえでの「+○%」を指します。したがって「上司が何を求めているか」を明確に理解できていなければ、+αのやりようがないというわけです。

部下が「上司が何を求めているか」を明確に理解していると、その延長線上にある+αの仕事がどんなものかも予想がつくようになります。さらに上司がこの+αの仕事をきちんと評価すれば、部下は上司がなぜその結果を評価するのかより深く理解できるようになり、+αの仕事を見つける力も高まっていきます。

【参考リンク】『伸びる会社は「これ」をやらない! 』

他者の中で「+αの仕事」のやり方を学ばせる

東京大学教授の中原淳氏が提唱する「職場学習論」に基づけば、部下が+αをしない原因は「+αの仕事の意味や、やり方を知らない」ことにあると考えることができます。

「職場学習論」は社会人が職場の中で学び、行動や認知を変化させていくという前提に立っています。これはつまり社会人は職場の他者とどのように関わるかで、どう成長していくが決まるということです。このうち職場の他者としては「同僚・同期」「上司」「上位者・先輩」が、関わり方については「業務支援」「内省支援」「精神支援」を挙げられています。