つまり、このボトルネックが起こった後、人類はいくつかの小さな集団に分かれていき、その後それぞれの集団が独自の進化を遂げた可能性があるのです。

過去の研究では、約90万年前から74万年前にかけて、2つの染色体が一つに結合し、現在の人類が持つ「2番染色体」が形成されたことが示されています。
この染色体の融合は、先ほど説明した人類の「ボトルネック」、つまり人口が急激に減少した時期と一致しているため、この二つの出来事が何らかの形で関連している可能性があると、研究者たちは考えています。
「ネアンデルタール人とデニソワ人もこの染色体の融合を持っているため、この現象は現生人類とこれらの集団が分岐する前に起きたと考えられます」と、ストリンガー氏は指摘しています。
ストリンガー氏はさらに、「今回の研究で開発された新しい分析手法が、将来的にネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム調査にも適用できるかもしれない」と期待を寄せています。
それが実現すれば、ネアンデルタール人やデニソワ人のゲノムを通して、今回発見された人類祖先の急激な人口減少を調査することができ、この時期に何があったのか異なる角度から明らかにできるかもしれません。
今回の研究は、人類の起源と進化について新しいページを開いたと言えるでしょう。
全ての画像を見る
参考文献
Humans faced a ‘close call with extinction’ nearly a million years ago
https://www.livescience.com/archaeology/humans-faced-a-close-call-with-extinction-nearly-a-million-years-ago
元論文
Genomic inference of a severe human bottleneck during the Early to Middle Pleistocene transition
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abq7487