表層的な現象ばかり追わず、トランプ氏の狙いは何なのかこそ分析してほしいと思うのです。読売新聞社説は「相互関税はあまりにも利己的で、自由貿易体制を破壊する暴挙である」と、批判します。私もそうだと思います。問題は、トランプ氏がなぜそんな振る舞い続けるのかの分析こそ聞きたいのです。

「トランプ氏はこれまでの国際経済秩序を破壊、革命を起こし、再構築すことを目指している」との指摘があります。読売の批判も表層的であり、なぜそんなことをするのかの分析が必要です。トランプ氏はグローバリゼーションが米国の製造業の基盤を破壊したとして、反グローバリゼーションの立場をとっています。米国人の相当部分も、グローバリゼーションの被害者だと思っているようです。

日経新聞の社説は「自由貿易体制を覆すトランプ関税には一辺の道理もなく、直ちに全面撤回すべきだ」、「中国との報復合戦が激化している現状は、憂慮せざるを得ない」と、批判します。正しい指摘ではあっても、トランプ氏に狙いが既存の秩序の破壊であり、破壊した上で別の秩序を構築しているように思います。そこを鋭く突いた社説を読みたいももです。

トランプ氏は貿易赤字のことばかり取り上げ、米国の金融、サービス業(GAFA)が世界で圧勝していることには一切言及していません。なぜなのか。超富裕層の多くが米国人であり、焦点を当てているのは、さびついた製造業の問題に力点を置いています。

狙いは「中国の覇権を阻止する。関税で壁を造ってもでも阻止する」、「26年の中間選挙で勝ち、その勢いで憲法の大統領の3選禁止を事実上、修正し、長期政権を狙う」、「世界が大混乱に陥り、製造業のサプライチェーンが寸断された場合に備え製造業を再構築しようとしている」など、いろいろあるでしょう。メディアには多角的な分析を望みます。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2025年4月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。