個人から全体支配へ――生体認証がもたらすディストピア
脅威は個人レベルにとどまらない。生体認証の大量導入は、国家規模の監視社会への第一歩ともなり得る。顔や声、指紋といったデータを網羅した巨大なデータベースが、政府や一部の企業の手中にある今、私たちの行動、発言、思考までもが管理される時代が到来しつつある。
この傾向を「陰謀論」と一笑に付すことは簡単だ。だが新型コロナウイルスのパンデミック時に見られた強制的な規制や監視の例は、「正義」という名のもとに自由がいかに容易く奪われるかを物語っている。生体認証の普及が進めば、その“次”のコントロールはより巧妙かつ強力になるだろう。
専門家の中には、こうした流れを「静かな専制」や「テクノロジーによる統治」と表現する者もいる。抵抗する者は非国民として扱われ、協力する多数派が「正義」として振る舞う。まさに、かつてのディストピア小説が描いた未来そのものだ。

(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)、『TOCANA』より 引用)