2025年4月5日に秋葉原で開催された「GeForce RTX 50シリーズ ノートPC メディア説明会&デモショーケース」では、主にゲーミングノートPC向けRTX 50シリーズローンチイベントとなったが、そこにはAI時代のモバイルコンピューティングの未来を示す要素があった。

 NVIDIA(エヌビディア)の最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」は、圧倒的な性能の高さ故に、発表以来、常に話題を呼んできた。同GPUを採用するGPUカードの品不足が続く話題は、ゲームに興味がない読者層でも耳にしたことがあるだろう。

 そのBlackwell=RTX50シリーズを搭載したノートPC群のAI処理能力の飛躍的な向上と、それがもたらすビジネスPCやパーソナルコンピューティングにおける未来への可能性について考えさせられた。

AI性能の飛躍:DLSS 4とBlackwellアーキテクチャの核心部分

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(画像=『Business Journal』より 引用)

ゲーミングPC向けGPUとして捉えた場合、GeForce RTX 50シリーズの中核をなすのは、DLSS 4(Deep Learning Super Sampling 4)の導入だ。

 DLSSは、NVIDIAが開発したAIベースの画像アップスケーリング技術で、低解像度でレンダリングされた画像を、AIを用いて高解像度に変換することでGPUの負荷を軽減しながらも高品質な映像を提供するというものだ。

 レイトレーシングのような高負荷なレンダリング技術と組み合わせることで、グラフィクスのリアリティを向上させつつ、高精細な映像を得ることが可能になる。AIによるアップスケーリングでは実際にネイティブ解像度でレンダリングした品質に近い、あるいはそれ以上のリアリティを得られる。

 この機能をベースに中間フレームの生成まで行えるようになっていたが、DLSS 3が1フレームにつき1枚の追加フレームを生成していたのに対し、DLSS 4では最大3枚の追加フレームを生成可能となった。

 例えば4K解像度で60フレームのレイトレーシングによるレンダリングが行える場合、出力は毎秒240フレームに達するフルレイトレーシング映像を用いたゲームプレイが実現できる。

 この性能向上を支えているのが、多次元配列演算を担う第5世代Tensorコアだ。従来比で最大2.5倍のAI処理性能だ。

”ゲーム用GPUでのAI性能”は、このように使われるが、ではゲーミング分野のみが応用範囲かと言えば、それは正しくない。

ビジネス分野への応用とオンデバイスAIの可能性  RTX 50シリーズのAI性能は、ゲームやクリエイティブ分野にとどまらず、ビジネス分野にも大きな影響を与える可能性を秘めている。

 Tensorコアの本質は、推論アクセラレータである。例えばDLSS 4では、大規模言語モデルでも使われているトランスフォーマーというアルゴリズムが採用された。より複雑なAI技術をオンデバイスで動かせるようになってということだ。

 例えば、高度なデータ分析や自然言語処理、リアルタイムの映像解析など、これまでクラウドに依存していた処理を、ノートPC上でリアルタイムに行えるようになる。自然言語処理は言うに及ばず、映像解析やデータ分析はオンデマンドで行えることで、セキュリティとプライバシーと応答性の両方に良い影響を及ぼす。

 AIの応用が進む一方、多くの企業が企業情報をクラウドAIにアップロードすることを忌避している。セキュリティやプライバシーの観点からも、オンデバイスAIの重要性が増している中、オンデバイスAI能力は多ければ多いほど価値がある。

 例えばComfyUIは、画像生成AI「Stable Diffusion」を操作するためのオープンソースのツールだ。各処理ステップを「ノード」として視覚的に配置し、それらを接続することで、柔軟かつ高度な画像生成ワークフローを独自に構築・運用できるが、ノートPC上でも軽々動作する様子は圧巻だ。

 マイクロソフトの小型言語モデル「Phi-4」のデモでも、ノートPC上で全く問題ないパフォーマンスが発揮されていた。企業が業務に特化した独自にトレーニングした高性能AIを運用する選択肢になり得る印象だ。クラウドベースのAIサービスに代わる実用的なソリューションとなる可能性をRTX 50は示している。