これら食べ物を口に運ぶときに使う食器に関する研究は少数行われているものの、箸が食事に与える影響はあまり分かっていません。
食事は人々の生活において重要な役割を持っているだけでなく、健康と主観的幸福感に多大な影響を与えます。
それゆえ、食器の物理的な特徴と食べ物の摂取量の関係性を理解することは、食器の生産とその使用の向上に関する情報提供として不可欠です。
そこで、研究チームは箸の長さに焦点を絞り、感じる美味しさや噛む回数などの心理・行動面への影響を検討しています。
実験に参加したのは、大学生78名です。
研究者らは、参加者を①長い箸(23 cm)を使う人と、②短い箸(19 cm)を使う人の2つのグループに分け、ご飯(80 g)を食べてもらいました。
そして食べ終えた後に、ご飯の香り、粘り気、硬さ、好感度、そしてもし購入するならどれだけ買いたいと思うかの評価をしてもらいました。
また箸の使いやすさが評価に影響する可能性を考慮し、箸の使用のしやすさの評価も行っています。
さて箸の長さによってご飯の美味しさや食べる時間に差はあったのでしょうか。
長い箸は食品の美味しさと商品の購買意欲を高める

実験の結果、長い箸を使った人は、ご飯をより美味しいと感じ、購入してまた食べたいと強く思う傾向がありました。
次に、短い箸を使う場合と比較して、長い箸を使ったときには、ご飯を食べ終わるまでの時間が長く、噛む回数が多いこともわかっています。
これは長い箸の方が食事に手間取ってしまうためと考えられますが、使用者は箸の長さで不便さを感じたり、使いやすさが変わったという印象は受けていませんでした。
研究チームは、長い箸がご飯を美味しく感じさせた大きな要因はこの「食事時間の変化」だと述べています。
箸が長いと食べるペースが遅くなり、よりじっくりと味わうため、ご飯がおいしく感じていたということです。