ただし、ここで注意が必要です。

たとえば「リストラ」という言葉、本来は経営の合理化を意味します。でも多くの人が「リストラ=クビになること」と受け止めているように、支出で見直される大部分は人件費になりがちです。

そのため構造改革もまた、多くの人の「雇用を奪う改革」になってしまいました。

実際構造改革がどういう内容のものだったか見てみましょう。

構造改革は無駄を減らしたが、多くは人件費
構造改革は無駄を減らしたが、多くは人件費 / Credit:ナゾロジー編集部,OpenAI
  • 派遣労働の解禁・拡大(1999年):企業が正社員を減らし、人件費を圧縮。
  • 終身雇用・年功序列から成果主義へ:人件費削減と労働力の効率化。

  • 法人税の引き下げ:企業が国際競争に勝てるようにする。

  • 公共サービスの民営化:郵政や電力の民営化により市場競争を導入し価格低下へ。

これは確かに企業のコスト削減を進め、利益を回復しました。しかしその多くに人件費の圧縮が含まれています。

そのため、企業の利益は増えましたが、働く人にはその利益が回らない構造が定着したのです。

結果として起きたのが、「格差の拡大」と「働いても報われない社会」の定着です。

苦しくなった生活を、私たちはどう乗り越えようとしたか?

このように庶民へのお金の流れが制限されたとき、低所得層ができる対策は基本的に2つしかありません。

それは「長時間働く」か「借金をする」かです。

  • 正社員は「残業代」も収入の一部として見込まなくてはならず拘束時間が長くなる

  • 非正規やフリーターは、生活費を確保するために複数の仕事を掛け持ちせざるをえない

  • 家計が足りない分はカードローン、奨学金、後払いサービスなどで「未来の収入を前借り」する

こうした状況に追いやられると、ほとんどの人は「抜け出せない貧困」状態に固定化されます。そうなれば当然多くの人は消費を控えざるを得ません。

そのため無駄を減らすという構造改革は、バブル崩壊で大幅に低下していた国内需要をさらに冷え込ませ、デフレを定着させる結果を生んでしまいました。