もちろんトランプ政権によって事態がいっそう悪化していく危険性はある。それにしても、日本が望むのは、アメリカの一極支配的な体制のソフトランディングと呼びうるような流れでの収束だ。トランプ憎し、の気持ちで浮足立つと、かえって日本が抱えるリスクも高まってしまいかねない。トランプ政権期であるからこそ、むしろ運命共同体としてのアメリカを支える気持ちが大切ではないだろうか。
日本人は、日米同盟を、国際秩序の盟主との間で結んだ直接契約であるかのように思っているのかもしれない。しかしアメリカは、世界の幾つかの大国の中の一つの大国、になろうとしている。日本から見れば、依然として圧倒的な国力を持つ超大国だ。しかし国際秩序の盟主といったものではない。日本は、少し異なる態度で、しかし依然として代替物のない外交資産として、アメリカとの同盟関係を運営していかなければならない。
5万円給付といった謎なアイディアが飛び交っている。しかし今起こっているのは、地震や津波のような自然災害でも、新型コロナのような感染症の流行でもない。国際社会の力の構造の転換という政治現象である。場当たり的な対応は、必要性が低いように思われる。パートナーとの緊密な対話を欠かすことなく、長期的な視野を持った展望を持つ努力をすることが大切だ。
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