ただし、色素の製造元や具体的な成分を公表していないケースが多く、「MRI検査時のトラブルを本当に回避できるのか」といった疑問も残るのが現状です。

また、アメリカ眼科学会(AAO)は2024年に「角膜着色手術はFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていない実験段階の医療行為であり、感染症や視力障害などの深刻なリスクがある」と再び警告を発しました。

これに反対する医師グループが「最新の研究成果を反映しておらず不適切だ」と撤回を求めていますが、AAO側は立場を変えていません。

多くの専門家は「10年から20年、あるいはそれ以上追跡した大規模データがなければ、安全性を断言するのは難しい」との見解を示しています。

医療目的で行われてきた角膜着色手術(先天的な虹彩欠損や外傷で生じた欠損補填など)も、何十年もの実績があるとはいえ大規模データは十分に揃っていません。

さらに、美容目的の場合、使用する色素や施術プロトコルが異なる場合があり、同列に評価できない点も多いとされています。

手術の費用や研究費用の問題、患者が地理的・時間的に長期追跡を受けにくい現状などが障壁となっているため、合併症や効果を大人数・長期間で検証するのは容易ではないのです。

こうしてみると、角膜着色手術はまだ道半ばと言えます。

比較的良好な経過をたどる患者が多いというデータはあるものの、角膜に根本的な操作を施す以上、視力障害や金属成分由来の合併症など、未知のリスクを完全に排除できていないのが現状です。

将来的にはより多くの症例と長期観察のデータが積み重なることで、真の安全性やリスクプロファイルが明らかになるかもしれません。

しかし、現段階では「未知の要素を多分にはらむ新技術」であることを忘れてはならないでしょう。

果たして“瞳の色”は買うべき?

目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中
目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中 / Credit:Canva

このように、角膜着色手術は「目の色を永久的に変える」という長年のニーズに応える最先端の美容医療として急速に広がりつつあります。