「この指トントンによっても脳のリズムを整えることができるなら、会話への同調率が高まり、言葉の理解力が上がるのではないか?」と考えたのです。
研究チームはこの仮説を検証するため、健常な大人(数十人)を対象にした実験を行いました。
実験では、ノイズの混じった会話音声を参加者に聞かせる状況を作り、その際に音声のリズムと同期するように指をリズミカルに叩かせることにしました。
ちなみに、指トントンの動作は自由なリズムではなく、音声(音の強弱やリズム)にできるだけ合うように指導されました。
音声には音節や単語ごとに異なるリズムがあるため、脳をこのパターンに合わせるようにすることで、リズミカルな言語を適切に処理できる可能性があると考えたのです。
話を聞く時の指トントンは「雑音フィルター」になる可能性
実験は3種類行われましたが、結果は、研究者たちの仮説を見事に裏付けるものでした。
ノイズの多い環境では、音声のリズムと指のタッピングを同期させていた参加者の方が、会話の内容を正確に理解できる確率が有意に高かったのです。
そしてある実験では音楽のビートも確かめられました。
しかし、指トントンせずに音楽のビートを聞くだけでは、この効果がそれほどあらわれませんでした。
このことは、能動的に指でリズムを取ることが、言語理解を高める鍵であることを示唆しています。

研究チームは、リズム運動によって脳内のタイミング処理が音声入力と同期しやすくなり、言語情報のピックアップ効率が上がると説明しています。
つまり「聞き取りにくい…」と感じるような場面でも、音声のリズムに合わせて指を軽くトントンするだけで、脳が“話の流れ”を掴みやすくなるというわけです。
とはいえ、今回の研究にはいくつか限界があります。