こうした膨大なデータにからAIはトレーニングされ、、「このサーモンは元気がない」「この個体は寄生虫の疑いがある」といった判断を下すことができます。

個体ごとの模様やサイズ、泳ぎ方の特徴から、AIが個体識別を可能にしているのも驚くべき点です。

何千匹といる中から、特定の1匹を識別し、追跡することもできるのです。

そしてどれだけ餌が必要か、無駄になっているかも把握でき、自動給餌ツールと組み合わせることで、環境汚染とコスト削減を両立させられます。

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エサの塊を検出可能。無駄になっているエサの量を把握できる / Credit:Tidal AI

また、病気や寄生虫の早期発見が可能となり、治療を最適化。品質を高められます。

さらには、出荷のタイミングを最適化することで出荷量の向上にもつながっています。

このように、サーモンは今やAIの目と判断によって育てられているのです。

「神の視点」とでも呼んでしまいそうなこの管理能力は、もはや人間の力を超えているかもしれません。

AIの力によって、サーモン養殖はますます発展していくことでしょう。

しかしふと、こんな疑問が湧くかもしれません。

もしAIが他の動物の管理にも応用されたらどうなるだろうか

家畜も、野生動物も、AIに管理してもらうなら、より効率的で安全かもしれません。

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既にサーモンはAIに管理されている。次は…… / Credit:Tidal AI

では、その次は何ですか?

SF映画のように、私たち人間がAIに管理される可能性もあるでしょうか。

朝目覚めると、AIが睡眠の質を判定し、食べるメニューを提案し、仕事の生産性を監視し、心拍数からストレスを読み取って適切な休息を指示してくれる未来があるかもしれません。

それはとても便利で、安心で、健康的で、効率的な生活であり、同時に悲しい世界でもあります。

そして既に、海の中では、そんなサーモンたちのディストピアが始まっているのです。