一見して効率の良い方法に見えますが、そこには多くの問題が潜んでいました。

たとえば、密集した環境ではウイルスや寄生虫の蔓延を防ぎにくく、病気が広がりやすくなります。

また、サーモンがどれだけ餌を食べたかを正確に把握できず、餌を過剰に与えることによって海が汚染されることもあります。

さらに、健康な個体と弱った個体が混在することで管理が難しくなり、出荷の効率も低下してしまいます。

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AIがサーモン1匹1匹を管理する / Credit:Tidal AI

こうした課題を解決するために登場したのが、企業「Tidal AI」です。

Tidal AI社は「魚の健康と海の未来を守る」というミッションのもと、AIとコンピュータービジョンを駆使して、サーモンを個別に監視・管理するシステムを開発しました。

これにより「どれだけ餌を食べたのか」「ストレスの兆候があるか」などを把握する、かつてない精度のモニタリングが可能となったのです。

Tidalのシステムはすでに大規模なサーモン養殖をリアルタイムで管理しており、複数の養殖業者と提携して導入が進められています。

AIがサーモンを管理する世界が訪れる!将来は……?

Tidalが開発したAI養殖技術には、どのような仕組みが使われているのでしょうか。

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高精細カメラとセンサーでサーモンを監視 / Credit:Tidal AI

海中には高精細カメラとセンサーが設置されており、サーモンの群れを24時間体制で撮影・スキャンしています。

AIはそこから得た膨大なデータをもとに、サーモンの動きや体の色、泳ぎ方などから健康状態を推測します。

このとき活用されているのが、コンピュータービジョンとディープラーニング(深層学習)という技術です。

これまでに世界中の700以上の養殖場にシステムを設置し、300億以上のデータを収集。5000万匹以上の成長サイクルを監視してきました。

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サーモンの健康状態を把握 / Tidal AI