20年代アメリカ経済は繁栄の時代で29年には株価はピークに達するも、大恐慌に陥ります。大恐慌の要因はいろいろあるのですが、ある日突然何かが起きたわけではありません。その中の重要な要因は20年代を通じて欧州が第一次世界大戦から復興を遂げ、それに伴ってアメリカの生産過剰で価格下落を引き起こしたことがポイントでした。特に下落するアメリカ農産物価格に焦点が当てられ、1930年6月にフーバー大統領が署名した関税引き上げ法案がその後、広く工業製品にも及び、大恐慌からの回復を阻んだのです。
高関税を敵対視した欧州などは報復を行い、世界はブロック経済化します。32年に民主党からルーズベルト大統領が選出され、ニューディール政策が行われ、34年に互恵通商協定法が成立、ここからようやく関税が下がり始め、更に62年の通商拡大法で更に税率が下がるという流れで今日に至っています。ただし、スムート ホーリー法の名残の関税は今でも一部の対象国に残っています。つまり今のアメリカの関税体制をスムートホーリーとは称しませんが、実態としては完全に払しょくされたわけではないのです。
第二次世界大戦の間接的引き金になったのもこのブロック経済と世界不況が生み出したとされます。私が先日のブログでこれは関税問題に留まらないかもしれないと申し上げたのはまさにこのことを申し上げているのです。
スムート ホーリーからニューディールに変わってもすぐに経済が立ち直らなかったのは「遅すぎた対策」故とされます。つまり一度引き上げ、更に報復関税が起きると「もう関税は止めた。元に戻ろう!」と言っても簡単に戻れないのです。これは歴史が証明しているのであってこれが正ならば我々は長いトンネルに入るところにあります。
ただ、唯一の望みはブロック経済が内向きの経済として極めて悪質だということを一般的な経済学者はほぼ誰でも理解しているのです。故に現在は対アメリカだけが高関税政策を行い、それ以外の国が独自のブロック形成に動いていないことが救われるところです。