また、王子の私生活のみならず、王子の母ダイアナ元皇太子妃(2007年、交通事故死)の私生活の「重大な侵害」についても謝罪した。母が亡くなったとき、王子は12歳。大衆紙の過熱報道が母を苦しめ、交通事故による死に追いやったと主張してきた。NGNが支払う賠償金の金額は明らかになっていないが、約1億ポンドと噂されている。

和解理由は?

なぜNGNは和解に応じたのか?

英メディアの複数の記事によると、約2カ月続くと見られた今回の審理でNGNの経営幹部や関係者が裁判の場に出ることを防ぎ、自社の評判悪化を避ける目的があった。

違法取材行為があったと今回認めたサン紙の編集長だったレベッカ・ブルックス氏は、現在NGNの最高経営責任者である。2011年、電話盗聴問題をめぐってNI社(当時)で危機管理を担当したウィル・ルイス氏は米ワシントンポスト社の最高経営責任者に就任している。

王子らの弁護士は、和解を機に国会が調査を開始するよう呼びかけた。ワトソン元議員もロンドン警視庁による捜査開始の期待を述べた。しかし、20年近く前に発生した大衆紙による不正アクセス事件について警察の人的資源や税金を投じるよう求める声は未だ出てきていない。

※「新聞研究」3月号掲載の筆者記事に補足しました。

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2025年4月7日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。