左派系高級紙ガーディアンはその後も取材を続け、不正アクセスの対象が著名人、政治家、行方不明となった少女にまで広がっていたと報道した。これを受けて2011年7月、NOW紙は廃刊された。

しかし、被害者の数が増える中で違法取材行為は発行元の「組織ぐるみ」だったのではという疑念が出てきた。編集及び経営幹部が下院の委員会に召喚されて、責任を問われる事態に至った。NOW紙廃刊から数日後、キャメロン保守党政権は新聞メディアの文化、慣行、倫理を問う独立調査委員会(「レべソン委員会」)を設置している。

その後の報道や警察の捜査でNI社が発行する日刊大衆紙サン、そしてほかの新聞社が発行する大衆紙でも違法な取材行為が行われていたことが発覚し、被害者となった著名人や政治家らに対し複数の発行元が賠償金を払うことで和解する例が続出した。

全面的謝罪を引き出す

NGN社は先にNOW紙での違法取材行為を認め、廃刊させているが、サンでの同様な行為や「組織ぐるみの事実を隠ぺいするために大量の書類を破棄した」という王子らの主張は否定してきた。約1300人に上る被害者には和解金を払い、その金額は裁判費用負担も含めて約10億ポンド(約1929億円)と言われている。最後に残っていたのがヘンリー王子とワトソン元下院議員だった。

王子は1996年から2011年にかけてNGNが発行する媒体に掲載された200余の記事が違法な手段を使って入手した情報の基づいていると主張。ワトソン氏は大衆紙による電話盗聴事件を調べていた約15年前、自分の携帯電話が発行元に盗聴されていたと述べていた。

和解時、NGNは声明文を発表している。同社は王子とワトソン氏に対し、NOWでの違法な取材行為について「全面的に謝罪する」。王子にはサンでの「重大なプライバシー侵害」について謝罪し、違法な取材行為はサンでは発生していなかったという前言を翻し、「私立探偵による違法行為」があったことを認めた。