その結果、同じ豆の量でも最も濃厚なコーヒーを抽出するには「ケトルを高い位置に固定し、お湯をある程度の強い勢いで太く注ぎ込む」のがベストであることが判明したのです。
お湯の勢いが強く、水流も太いと、粉の中で“雪崩”のような現象が発生し、粒子が激しく動きながら混ざることが確認されました。
これはコーヒー粉が一度お湯に押し流され、その後また再び沈んでいくという循環運動を生み出し、結果としてお湯と粉の接触面積が最大化し、その分だけコーヒーの抽出濃度も最大化されるという非常に効率的な抽出法だったのです。
こちらは実験の様子。
一方で、注ぎ口が細すぎると水が途中で途切れて“しずく”状になりやすく、そうなると粉とお湯との混ざりが不十分になってしまいました。
また、極端に低い位置から注ぐ場合も、粉の中に十分な動きが起こらず、抽出効率が落ちるという結果になっています。
環境にも優しいドリップ方法

驚くべきことに、このハンドドリップ方法を用いれば、コーヒー粉の量を最大10%削減しても、同等もしくはそれ以上の“濃さ”を得られる可能性があると研究者は指摘しています。
これを踏まえると、今回の研究の意義は、単においしいコーヒーを淹れるテクニックにとどまりません。
人類は年間数百億キログラムのコーヒー豆を消費していますが、その生産には広大な農地と膨大な水資源が必要であり、環境に多大な負担をかけ続けています。
しかし使用する豆の量を減らしながらも、これまでと同等以上の濃さのコーヒーが抽出できるのであれば、その分だけ環境への負担を減らすことができるのです。
またこのハンドドリップの方法には、新たな道具を用意する必要もありません。
「本当にその仕方で濃厚なコーヒーが淹れられるのか?」
気になった方はぜひ、ご家庭や職場で試してみてください。
全ての画像を見る
参考文献
Coffee too weak? Try this!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1079393?