とりわけ、相手への共感が乏しいタイプの場合、自分の快楽を優先し、嫌がられているかどうかをまったく顧みない行動をとる恐れがあるのです。
こうした結果は、男性の性的攻撃行動が「負け犬の遠吠え」だけでは説明できないことを改めて示しています。
ライオンの群れでボスを奪い取ったオスがさらに群れを支配するように、人間社会でも“頂点に立った”という認識が引き金となり、周囲を踏み台にする行動が生まれるケースがあるのかもしれません。
もしこのタイプの人間が独裁者となり、勝てば勝つほど暴走を高めていったとしたら、社会に悲惨な結果を残すかもしれません。
こうした知見は、社会的地位と人格特性の相互作用を理解し、性的暴力やハラスメントを防止するための施策を考える上で有用です。
これまでは、敗北時のフラストレーションをケアする視点が強調されがちでしたが、勝利者の暴走を防ぐ視点も同様に重要かもしれません。
特に、権力や名声を得た人が自制を失って暴走する事例は、ニュースなどでもたびたび取り上げられてきました。
今後の課題としては、大学生男性に限られたサンプルだけでなく、多様な年齢層や文化圏、職場など現実社会の文脈で再現研究を行う必要があります。
また、勝敗のシナリオをどう設定するかによって結果が変わりうるため、実験手法の改善と検証も重要になるでしょう。
最終的には、サイコパス的特性を持つ男性が勝利から得る“優越感”や“支配欲”をいかにコントロールするか――組織や教育現場、コミュニティなどで具体的な対策が求められます。
スポーツやビジネスの世界でも“勝者が牙をむく”前にブレーキをかける仕組みを整えることが、長期的には社会全体の安全や安定につながるかもしれません。
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元論文
Effects of Intermale Status Challenge and Psychopathic Traits on Sexual Aggression
https://doi.org/10.1002/ab.70025