まず、「負けたからこそ攻撃的になる」というパターンはほとんど見られず、むしろ「勝利した」男性のほうが好まない映像を長く送る傾向が強かったのです。 

さらに注目すべきは、サイコパス的特性のうち「対人操作や感情の希薄さ」が高い人ほど、その傾向が顕著だった点です。 

勝ったことで高まる“支配欲”が、相手の気持ちを無視してでも自分の欲求を貫こうとする行動につながったと考えられます。

一方、「衝動性や反社会的行動」が高い人は、勝敗で行動が大きく変わるわけではありませんでした。

つまり、“衝動的に違反行為をする”タイプよりも、“冷酷に相手をコントロールする”タイプのほうが、勝った瞬間に性的攻撃行動へシフトしやすいという構図が浮かび上がってきたのです。

言い換えれば、“勝利”による優越感が、もともと持っている“冷淡さ”を加速させるリスクを示唆しているといえるでしょう。

社会が防ぐべき“勝者の暴走”

サイコパスは競争に勝つとエロ嫌いな女性にエロ画像を送る攻撃性を発揮する
サイコパスは競争に勝つとエロ嫌いな女性にエロ画像を送る攻撃性を発揮する / Credit:Canva

今回の研究結果は、男性の攻撃的行動に関する先行研究とも部分的に一致しています。

スポーツの世界では、試合に勝利した男性がテストステロンやアドレナリンの分泌増加によって興奮状態に入り、挑発や攻撃的な態度をとりやすくなるというデータがありますが、それが性的攻撃にまで波及する可能性を示した点が新しいのです。

ただし、すべての男性が“勝利”で即座に性的攻撃に向かうわけではありません。

今回の実験では、「衝動的・反社会的」特性よりも、「対人操作や感情の希薄さ」のほうが大きく影響していました。

サッカーの試合でゴールを決めた選手が、味方と喜ぶどころか相手を煽り始めるケースと、勝っても相手を称えるケースの違い――その背後には、もともと備わっている人格特性があるのかもしれません。

一部の研究では「挫折や敗北」が暴力行動の引き金になると考えられてきましたが、本研究はむしろ“勝利による自信と権力感”が危険要因になり得ることを示唆しています。