奇妙なスパ文化と消えていった民間療法
この“クジラスパ”には、ちょっとした観光業の要素もあった。患者たちはホテルから案内されてクジラの死骸までボートで移動し、治療を受ける。ホテル側もその滞在費や食費で利益を得ていたとされ、ある意味で“死体観光”とも言えるビジネスが成り立っていたのである。
なかには「特定の日にクジラを用意してほしい」と電報で依頼する者まで現れたという。医師の予約のように、死骸治療が扱われていたわけだ。
女性の場合は裸ではなくウールの衣を身に着けて体を覆いながら潜り込む形式であったが、共通して言えるのは、その環境がいかに苛酷で、かつ“信じられていた”かということだ。
一部の治療計画では、30時間に及ぶ長期滞在を推奨し、それにより1年分の痛みが取り除かれるという主張もあった。

(画像=Image by Three-shots from Pixabay,『TOCANA』より 引用)