腐った脂肪に埋もれて90分 “海の温泉”で奇跡を待つ人々

 この治療法は、実際にクジラの体内に“墓穴”のようなスペースを掘り、そこに患者が横たわるというものだった。クジラの腐敗熱によって内部温度は40度を超え、まるでサウナのような環境が生まれる。治療を受けた患者たちは、全身を脂肪と内臓に包まれながら、最大で2時間近くそのままの状態で過ごしたという。

 ある記録によると、3人の男性がそれぞれ90分間クジラの中に入り、1人は杖なしで歩けるようになり、別の1人は上半身の痛みが軽減されたと語っている。

 また、患者たちは「新鮮な死骸」よりも「しっかり熟成された」ものを好んだとされる。これは、痛みを和らげる効果が“腐敗によって生じたガス”にあると考えられていたためだ。アンモニアやメタン、硫黄化合物などの刺激的なガスが、強力な熱を伴い体内を刺激すると信じられていた。