2030年にはバス運転手が3万6,000人不足するという試算も出ている。「もっと働いて稼ぎたい」運転手と、「シャトルバスを増やして観客を呼び込みたい」Jクラブや、「スタジアムへの足を便利にしてほしい」ファンの思いを阻んでいるのが、「2024年問題」がもたらした結果とはいえないだろうか。
ここ数年に竣工されたサッカー専用スタジアムの多くは鉄道駅近くにあり、バス要らずの便利さを誇るが、そんな恵まれたクラブばかりではない。
特に2002年の日韓W杯や、国体のために建設されたスタジアムは市街地から離れた郊外にあることが多く、バスによる来場が前提であることも多い。一部クラブは、タクシー会社やライドシェアサービスとの提携を進めることで、バス以外の選択肢を提供しようと模索しているが、それでも限界があるだろう。
バス業界の働き方改革というポジティブな目的から生まれたはずの「2024年問題」は、Jリーグのスタジアムアクセスはじめ、路線バスに頼る地方都市の交通網を脆弱にさせる新たな課題を浮き彫りにした。クラブや自治体がこの問題にどう対応し、またスタジアム来場者の声をどう反映させていくかが、今後の観客動員やリーグ全体の発展に影響を与えるだろう。特に地方クラブにとっては、限られたリソースの中でアクセスの利便性とコストのバランスを取ることが喫緊の課題となっている。