まずチームは、群れに属する個体をAかBいずれかのグループにランダムに振り分けました。

それぞれの個体には、餌箱の鍵となるタグが付けられており、これにはA・Bのグループに対応した2種類が存在しています。

(また各個体は長年の観察により、どのペアが親友同士で、どのペアが家族関係にあるのかが分かっている)

そして次に、2つの餌箱を隣同士で設置しました(下図を参照)。

それぞれの箱には鍵のかかったドアが2つ付いており、一方には普通の餌である「穀物」が、もう一方には大好物である「乾燥ミールワーム」が入っています。

ニシコクマルガラスにとって穀物は平凡な食事、ミールワームはごちそうです。

実験セットのイメージ
実験セットのイメージ / Credit: Michael Kings et al., Nature Communications(2023)

実際のゲームでは、鳥が一羽で餌箱の前の台座に立つと(AかB)、チップが反応して平凡な餌である穀物のドアだけが開きます。

他方で、同じグループの鳥と一緒に2つの餌箱の台座に立つと(AAかBB)、ごちそうであるミールワームの扉が開かれます。

しかし以前から付き合いの長い親友同士だからといって、AとBの2羽が来てもごちそうの扉は開かれません。

高い報酬の鍵を開けるには、見ず知らずの相手でも同じグループの個体とペアを作る必要があります。

つまり、同じグループに親友がいない場合、ごちそうを得るには古い友人との縁を切って、新しい友達とペアになければならないのです。

ここで試されたのは「友情」か「報酬」かの究極の2択でした。

「友情は裏切る」が「家族の絆」は尊ぶ

実験結果は非常に興味深いものとなりました。

まずニシコクマルガラスたちは非常に賢く戦略的で、同じグループの鳥とペアで台座に立てば、ごちそうの扉が開くことを学習すると、その相手と新たな友情関係を積極的に築き始めたのです。

その代わり、かつての親友とは縁を切り、疎遠になっていました。