すぐお隣の国でありながら、朝鮮半島の歴史を知っているという人は少ないかもしれません。
朝鮮半島には14世紀末期から20世紀初頭にかけて李氏朝鮮という国家が存在していました。
李氏朝鮮は、500年近い長い歴史を持つ王朝であり、その間に多くの文化的、社会的な成果を上げています。
特に、15世紀のセジョン大王(世宗)の治世は、ハングルの創造や科学技術の発展など、多くの業績を生み出し、韓国の歴史においても誇り高い時代とされています。また、儒教に基づく社会制度や倫理観は、現代の韓国社会にも深く根付いており、その影響は今も色濃く残っています。
しかし、長きにわたる王朝が必ずしも安定して続くわけではありません。特に李氏朝鮮末期には、内政の腐敗や社会的不正義が深刻化し、国の状況は極めて厳しくなりました。
今回は、この時期の問題点に焦点を当て、李氏朝鮮の末期の社会の暗黒面について紹介してきます。
なおこの研究は、小川隆章(2020)『近世朝鮮社会の4つの特徴に関する付加的考察』環太平洋大学研究紀要17巻に詳細が書かれています。
目次
- ガチで箸より重いものを持たない!? 支配層「両班」と人口の4分の3を占めた奴隷
- 反社と同レベルだった李氏朝鮮末期の役人、宵越しの銭しか持てない庶民
- やる気のない裁判官、中世レベルの拷問を行っていた拷問官
ガチで箸より重いものを持たない!? 支配層「両班」と人口の4分の3を占めた奴隷

李氏朝鮮は、実に不思議な奴隷制度の舞台でした。
李氏朝鮮の奴隷制は、まるで時の流れを忘れたかのように、前近代世界のどこよりも緻密で壮大な制度として存在していたのです。
1663年、ソウル北部では、住民の75%が奴隷という驚異の数字を示す資料がありました。
まるで、普通の町の住民のうち、4人に3人が奴隷であるかのような、非常に高い割合で奴隷が暮らしていたのです。