実は心理学やメディア研究の分野でも、音楽や映画と同じように「ビデオゲームによるノスタルジー」が人の気分を高めたり、人間関係をやわらかくしてくれるかもしれないという説がたびたび提案されてきました。

いわゆる“懐かしのドット絵”や当時の操作感を再現するレトロゲームを遊ぶことが、まるで“思い出のタイムマシン”に乗って過去の自分に会いに行くような感覚をもたらすのではないか、と。

一方で、ゲームは他のメディアに比べても操作や画面の臨場感が強く、体験としてより深く体にしみついている場合があります。

「気づいたら子どもの頃のゲームを延々とやっていた」「古いはずなのに遊ぶたびにワクワクする」など、多くの人がなんとなく感じてきた“記憶とゲームの強い結びつき”は、もしかしたらデータで説明できるかもしれません。

歴史を振り返ると、1983年のいわゆる“ゲーム産業の危機”をきっかけに、一度盛り下がりかけたビデオゲーム市場がファミコンの大ヒットで再起し、以降、次々と登場する新ハードが「今度はこんなに画面が綺麗!」「オンライン対戦ができる!」と私たちを驚かせてきました。

しかし、どんなに新しくリアルな映像を実現しても、当時触れた“思い入れのあるゲーム機”へこそ強い愛着を感じる人は多いようです。

もともと10代や20代前半に聴いた音楽や観た映画を一生忘れられない、という現象は研究界隈では「リミニッセンスバンプ」と呼ばれています。

ですがゲームの場合はコントローラの持ちやすさやキャラクターを操作する手ごたえ、ときには家族や友達との会話までセットになって記憶が封じ込められているので、より強いノスタルジーを引き出すのではないかという見解があるのです。

さらに興味深いのは、「自分が現役で遊んでいた時代のゲーム機」だけを懐かしむとは限らないという点です。

たとえば、平成生まれのはずなのに初代ファミコンよりもさらに古いハードをわざわざ探し出して遊んでいる人もいたりします。