肥大化を続ける欧州サッカー界と税務当局のせめぎ合いは、今もってなお続いており、これからも続くだろう。


Jリーグ 写真:Getty Images

日本とブラジル間の租税条約

Jリーグでは、外国籍選手の出身地ナンバーワンは今も昔もブラジルだ。Jの助っ人の約6割がブラジル人選手といわれている。最も大きな理由は、日本とブラジル間の租税条約の内容にある。

ブラジルのクラブから日本のクラブへ選手が移籍した場合、日本のクラブからブラジルのクラブへ移籍金の支払いが行なわれる。当然20%の税がかかると思われるが、日本とブラジルの租税条約ではサッカー選手の輸出入(移籍金)が免税措置の対象項目となっているのだ。

この条約は二重課税を防ぐためのもので、ブラジル人選手は軽減税率や一部免税措置の対象となる。そのため、租税条約の結ばれていない国でプレーするよりも日本でプレーする方がブラジル人選手にとってメリットは大きい。

仮に100万ドルの移籍金がかかった場合、一旦は約125万ドルを支払うのだが、税として上乗せされた約25万ドルは後に還付される。また、ブラジル人選手が受け取る(クラブが支払う)年俸も軽減税率の対象となり、Jクラブにとってもメリットがある。

租税条約が適用されるのは、ブラジルのほか1、2か国しかない。EU圏選手やアルゼンチン人選手、韓国人選手がJリーグに来てもこの免税の対象にはならない。

ブラジルにはプロサッカー選手が1万人以上いるとされ、年間に800人以上が海外に移籍しているという。ブラジルでは契約書があっても給与遅配など日常茶飯事。一方、日本ではそうしたことはほぼ皆無だ。さらに入金日が土日や祝祭日だった場合、その振り込みが前倒しされることにブラジル人選手は驚くという。

加えて、ブラジル人選手の所得税は自国内では基本27.5%だが、日本に来ることでその負担が軽くなる。治安の良さも相まって、日本からのオファーを待ち、移籍が叶えば家族揃って、日本での快適な生活を送ることを望むのは自然な成り行きだろう。