特筆すべきは、プレミアリーグの放映権収入の巨額さだ。2023/24シーズンでは最下位のクラブでさえ、ドイツのブンデスリーガ優勝クラブの約2倍の放映権料を受け取っている。この莫大な収入が、プレミアリーグ各クラブの財務基盤を支え、高額な移籍金や給与の支払いを可能にしている。
しかし2017年以降、CRS(共通報告基準)の導入により、各国の税務当局の間で金融口座情報が自動的に交換されるようになった。これにより海外口座を利用した租税回避が不可能となった。

イギリス、EU離脱による変化
一方で、合法的な税金対策も存在する。例えば、選手が自身の肖像権を管理する会社を設立し、その会社を通すことで、個人所得税率よりも低い法人税率の適用を受けるケースがある。
また、クラブ側もあらゆる税務対策を駆使している。選手の移籍金を一括で支払うのではなく分割払いにすることで課税所得を平準化する手法が用いられている。
イギリスが2020年にEUから離脱(ブレグジット)したことで、EU内選手の獲得が厳しくなった。それまでEU内選手の獲得は比較的容易だったが、ブレグジット後は就労ビザの取得が必要となり、特に若手有望選手の獲得が難しくなった。
また、EU域内でのVAT還付の仕組みが変更されたことで、クラブの海外遠征や国際大会参加時のコストも増加。さらに、ポンド安の影響で海外選手の獲得コストが上昇し、クラブの財務に追加的な負担となっている。
これらの変化に対応するため、プレミアリーグのクラブは、国内若手の育成強化、南米やアフリカ、アジアなどEU外からの選手獲得、財務戦略の見直しと経費削減を行っている一方で、チケット代が高騰し、「もはやプレミアリーグのスタジアムに入れるのはお金持ちと観光客だけ」と揶揄されるまでになってしまった。