この記者証で首相官邸での会見やブリーフィングに出ていた。

また、FPAが開催する会見場に大臣や野党議員幹部、著名人などがやってくることも頻繁にあったので、タイムリーでかつ非常に興味深い会見にも出た。会見場にいる記者同士で同じ質問を繰り返し、答えたがらない大臣からなんとか回答を引き出す場にも何度も遭遇した。

のちにFPAを抜けたのだが、その後も問題なく政府関係の会見に出た。自分の身分を証明するもの(筆者のパスポート)を見せれば、会見場に入れたからだ。

FPAを経て得た記者証で様々な組織の会見に出て、時には質問をしていたのだが、政治関連の会見では、日々のレベルでは、自分はもう出なくてもよいと思うようになった。それは自分がフリーであり、毎日原稿を出さなければならないテレビ、ラジオ、新聞の記者ではないからだった。

例えば首相広報官によるブリーフィング(政府が何をしようとしているかを記者に説明する)は1日に2回あるが、これに出て、内容をまとめたり、レポートをしたりするのは、フルタイムの仕事であり、そのような出力を即時に求められる職に就く報道機関にいない限り、かなり体力的にしんどいし、意味がない。このグループに入る記者たちは必要があって、会見やブリーフィングに出ているのである。

ある程度の時間的余裕をもって出力をする記者・ジャーナリストの場合、会見場所以外にも多くの情報収集の機会があるので、これをフルに活用できる。

政府省庁自体がすでに多くの情報を出す。またテレビを通じて会見の様子や担当大臣の発言を拾うことができる。大臣の発言の要旨をつかんだら、これを批判的に見るような野党側の意見、非政府組織、識者、あるいは特定の政策の影響を受ける市民の声を自分で取材することもできる。政党や政治家にコネがあれば、電話して「あれはどうなんですか?」と聞いてもよい。情報収集の場は無数にある。

要は、視聴者及び読者のために役立つ情報を収集できるかどうか、である。

「入れない」空間はどうする?