昨年7月中旬から年末までにヘルソン付近にロシアからの小型ドローンが9500回攻撃をかけ、少なくとも37人の民間人が死亡、100人以上が負傷した(地元警察発表、英フィナンシャル・タイムズ、2024年12月4日付)。
雨が降りそうになると、ヘルソンの市民は外に買い物に出かける。少なくとも、ドローン攻撃が止むだろうと思えるからだ。突然やってくるドローンは住居の上で旋回していることもあれば、時には建物にぶつかったり、時には通りを歩いている人を追うように迫ったりする。「まるで獲物になったようだ」と軍関係者の一人がいう。FT記事は、ドローンで攻撃されて片足の先を失った民間人がベッドに座ってこちらを見る写真を掲載した。
ウクライナにとっても有力な武器
実験台にされた人々の悲哀が伝わってくる記事だが、ウクライナ側にとっても、ドローンは有力な武器だ。
12月4日付のFT紙記事は欧州の防衛技術のスタートアップ企業Helsingの有力製品を嬉嬉として紹介している。Helsingによると、同社新開発のAI搭載ドローンはすでにウクライナやNATO加盟国で使われている。3D印刷技術を用いほかのドローンよりはるかに低い価格で提供できるという。
ドローンを活用するウクライナにとって、課題となっていたのがロシアが電磁波を使ってGPSやドローンとオペレーターとの通信を妨害することだった。Helsingのドローン「HX-2」は最長100キロまで飛行可能で、通信が途絶えてもターゲットに届く機能を備えているという。
同日に開催されたロンドン国防会議に出席したジョン・ヒーリー英国防大臣はHelsingが英国に生産拠点を設置予定で、今後5年で3億5000万ポンド(約669億円)の投資を計画していることを発表した。
英国政府は「月単位ではなく週単位でイノベーションが生まれる」ウクライナから学ぶ必要がある、と国防相は述べた。会議で披露した新「防衛産業戦略」は「英国経済の成長と良い雇用を生み出す」ものとして紹介されている。