しかも、その後の発生サイクルである程度は回復できるという“しぶとさ”が、鳥の羽毛の大きな特徴なのかもしれません。

ただし飛行用の羽はタイミングを逃すと再生が追いつかない個体が多く、そこに「ある時期を過ぎると戻せない」という時間的制約の存在が浮かび上がります。

これを建設にたとえるなら、「配管や骨組みを入れる段階でミスをすると、後から修復しきれない部分が出る」ようなイメージともいえるでしょう。

一方、「原始羽毛→分岐した羽毛→再び原始型に逆戻り(&再度分岐)」というふうに、羽毛はかなり自由度の高い発生回路を潜在的に持っている可能性があります。

たとえ一時的にShhが下がっても、休眠中の毛包や幹細胞が後から追い上げて、最終的には元どおりに分岐するというわけです。

これは、鳥類が多様な羽毛を獲得してきた進化の背景を考えるうえでも鍵になります。

古代の化石研究で示唆された“糸状のプロトフェザー”と、現代鳥類の「高度に分かれた羽毛」が連続しているのは、そうした柔軟なシグナル制御が働いているからなのかもしれません。

さらに言えば、既存の研究で「Shhを強めると鱗が羽毛化する」という報告もあり、今回は逆に「Shhを弱めると羽毛がシンプル化する」現象が示唆されました。

これらを総合すると、「羽毛そのものが非常に“シグナル任せ”かつ可塑性を備えた構造であり、遺伝子スイッチ一つで形状が大きく変わりうる」という仮説が一層強まります。

これはなにも鶏や鳥類だけの話ではなく、動物進化全般に言える普遍的なメカニズムに通じるかもしれません。

最終的には、飛行羽とそれ以外の羽毛で“やり直せるかどうか”が分かれるという点も興味深い課題を提起しています。

「すべての羽毛が同じ仕組みで生えているわけではない」ことや、「特定の機能(飛行)には締め切りが存在する」ことを強く示唆しているためです。

こうした観点から見ると、羽毛は単に進化を積み重ねてできあがった最終形態なのではなく、複数のシグナルと時間制御が交錯する“折衷の結晶”なのかもしれません。