「鶏が恐竜の羽を生やす」──そんな一見ありえない話が、スイスのジュネーヴ大学(UNIGE)で行われた研究によって実験的に示唆されました。

古代の恐竜から現代の鳥へと繋がる進化の道筋には、複雑な羽毛の獲得が大きく関わっていると考えられています。

ところが、ある分子シグナル(ソニックヘッジホッグ:Shh)を一時的に抑えるだけで、鶏の羽毛がまるで祖先的な“原始羽毛”に近い姿へと巻き戻るかのような現象が観察されたというのです。

まるでタイムマシンで恐竜時代を訪れたかのように、長い進化の歴史を、たった一度の処置で少しだけ遡ったようにも見えるその光景には驚きが隠せません。

では、この“羽毛の逆行”ともいえる現象はどのように起こり、何を意味しているのでしょうか。

研究内容の詳細は学術誌『PLOS Biology』にて公開されています。

目次

  • 恐竜と鳥をつなぐ羽毛の謎
  • 鶏が恐竜時代の羽毛を再現する
  • 原始羽毛の復活が示す“進化の隠し回路”

恐竜と鳥をつなぐ羽毛の謎

現代ニワトリに蘇る「恐竜の羽」――最先端実験が暴く進化の逆再生
現代ニワトリに蘇る「恐竜の羽」――最先端実験が暴く進化の逆再生 / この図は孵化後7日目のヒナの体に生えている2種類の羽毛を示しています。 左側または中央に見られる硬い羽軸(中心部)がある羽毛は、飛行や体の輪郭を形成するための「ペナシアス羽」で、精巧な構造を持っています。 一方、羽軸がはっきりしない、ふんわりとした柔らかい羽毛は、断熱や保護に役立つ「プルムラシアス羽」を表しています。 この図から、同じヒナでも異なる機能を持つ羽毛が地域ごとに存在することが一目でわかり、進化の多様性や発生の仕組みの複雑さが直感的に理解できます。/Credit:In vivo sonic hedgehog pathway antagonism temporarily results in ancestral proto-feather-like structures in the chicken