私たちが想像する恐竜というと、つい「巨大でゴツゴツした皮膚をもち、地を踏みしめる爬虫類」というイメージを抱きがちです。
しかし近年、中国・遼寧省などの地層から相次いで出土した化石は、一部の恐竜が“羽毛”や“羽毛に近い糸状の構造”をまとっていた可能性を示しています。
とくに小型肉食恐竜の化石には、フサフサとした毛状の痕跡が残されており、「恐竜と鳥の境目はどこなのか?」という大きな謎を突きつけてきました。
そもそも鳥の羽毛は、森で見かける樹木の枝のように何重にも分岐し、一本一本に細かなフック状構造までもつ、とても精巧なつくりです。
ところが昔はもっとシンプルな“糸状の毛”が出発点だったと考えられており、「なぜそこから現代の鳥のように高度に分かれた羽毛へと進化したのか」が、恐竜から鳥への重要なテーマとなってきました。
これまでの研究で、羽毛の形成には「ソニックヘッジホッグ(Shh)」「Bmp」「Wnt」など、複数の遺伝子シグナルが関与していることが明らかになっています。
なかでもShhは、細胞の分裂や形づくりを積極的に促す“アクセル役”のように機能するため、Shhが高いほど羽毛の分枝が活性化し、低いほどシンプルな形で止まる可能性が指摘されてきました。
ただし「実際に生きた鶏胚において、Shhを弱めたらどんな羽毛が生えてくるのか」を系統的に確かめるのは難しく、これまでは小さな組織片を培養して操作する程度にとどまっていたのです。
とはいえ、ニワトリを含む鳥類は、獣脚類恐竜から分かれた一系統であり、いわば“恐竜の子孫”といえる存在です。
もし現代の鶏胚でShhシグナルを人為的にダウンさせたら、遠い祖先を思わせるような原始的な形態に近づくのか──それはまるで時空をさかのぼるような壮大な実験にも思えます。
実際に、中国・遼寧省の化石に見られる“毛のある恐竜”の発見を機に、祖先の毛状構造と今の分岐した羽毛の連続性を研究する動きが活発になってきました。