これらの課題を解決するために、研究チームが開発したのが熱や圧力を使わずに木材を密化させる「self-densification(本記事では自己密化と呼ぶ)」という手法です。

この方法では、まず木材から部分的にリグニン(結合剤のような成分)を取り除きます。

その後、セルロース繊維と残りのリグニンを特殊な溶剤(LiCl/DMAc)に浸します。

それらを10時間自然乾燥させると、繊維同士が自ら引き寄せ合い、高密度に再配置されます。

つまり、木材内部の繊維が自発的に動き、自然に密に並び直すことで外部圧縮を使わずに強度が増すという仕組みになっています。

では、この新しい材料は、どれほどの強度を持っているのでしょうか。

鋼より強く、釘にしても折れない「超ウッド」が誕生

新しく開発された「自己密化木材」がどれほど優れているのか、具体的な性能を見ていきましょう。

まず、引っ張り強度は496.1MPaに達しており、これは天然木材のおよそ9倍に相当し、アルミニウム合金と同程度の強度です。

曲げ強度は392.7MPa、衝撃靭性は75.2kJ/m²と、従来の木材の限界をはるかに超える性能を示しています。

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均等に収縮 / Credit:Dafang Huang(Nanjing University)et al., Journal of Bioresources and Bioproducts(2025)

とくに注目すべきは、木材がすべての面から内側に均一に収縮するため、元の木材の比率が維持されるという点です。

従来の方法では得られない、「全方向に対してバランスよく強度が高まる」という理想的な構造が実現できています。

まるで天然の木材が自ら鍛え直されたかのように、強度にムラがなく、どの方向からの力にも耐えることができるのです。

さらに、従来のようにエネルギーを大量消費する高温圧縮プロセスを必要としないので、より安価な材料になります。