最大の問題は、このブロックの基準や運営主体が不明瞭で、ユーザーが誤ブロックを報告しても改善されるかどうかが保証されないことです。

企業としては国境や法律の違いをすべて詳細にチェックするのは困難かもしれませんが、セーシェルのように既に法改正が行われた場所であっても同じ規制を続けるなど、現状は“ブラックボックス”のまま放置されているように見えます。

さらに、これが書籍だけでなく、Kindleなどの電子書籍やクラウド上のデジタルコンテンツに広がる可能性も指摘されています。

もし同様のフィルタが電子書籍で適用されれば、ワンクリックで世界中の本を買えるという夢が、一瞬にして“柵のある図書館”へと変貌してしまうかもしれません。

研究者たちは「誤ブロックをユーザーが報告できる仕組みを整える」「規制の根拠を明示して、適切に更新する」「無差別的な横並び規制をやめ、必要最小限にとどめる」といった改善策をAmazonに提案しています。 

しかし政治や宗教が絡むセンシティブな問題であるため、企業側が慎重になるのも事実です。

それでも、巨大プラットフォームが世界中の書籍や情報を事実上コントロールできる時代だからこそ、「どういう原則で、どこまで規制するのか」を見えないまま放置することは、今後ますます大きな議論を呼ぶでしょう。

私たち一人ひとりが情報へのアクセスを当然と思わず、こうした“裏側のフィルタ”の存在を知ることがまず第一歩となりそうです。

全ての画像を見る

元論文

Banned Books Analysis of Censorship on Amazon.com
https://citizenlab.ca/2024/11/analysis-of-censorship-on-amazon-com/

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。