この量子の世界で、それがまるで蝶の羽の模様のような形をして現れるため、「ホフスタッターの蝶」と呼ばれています。
しかも、調べてみると、磁場が弱い時には電子同士の結びつきが強くて“ギャップ”と呼ばれる隙間ができるのに、磁場を強くすると不思議とその相互作用が弱まり、バンドが広がってしまう、という意外な動きも見つかりました。
これは、単純な理論では説明できないほど複雑な要素(スピンやバレーなど量子の性質)が、蝶の羽ばたきに影響を与えているからだと考えられています。
なぜ今回の成果がすごいのか?
第一に、長年「数千テスラ級の超強力な磁場がなければ観察できない」と思われていたホフスタッターの蝶を、モアレ超格子によってわずか数テスラ程度でも観察できると証明した点です。
第二に、これまで理論や間接的な測定から推測するしかなかった量子現象を、STMの“分光画像”というはっきりした形でとらえられた点にあります。要するに、電子たちがどんなバンド構造を作り、どんなふうに分裂や再配置を起こしているかを“直接見る”ことができたわけです。
これによって、ねじれた二層グラフェンのような“モアレ材料”には、私たちがまだよく知らない「トポロジカル相」や「超伝導相」といった新しい物性が隠れている可能性がさらに高まったといえます。
わずか0.6度のねじれが生み出す量子の舞台で、電子たちが踊る姿を最前列から観察する――それが今回の研究の意義です。かつては理論上だけの“幻”とされてきた量子のフラクタル模様が、ついに“リアルな”実験データとして私たちの前に現れた瞬間でもあります。
変幻自在な量子蝶、意外な相関で舞い続ける

今回の測定でもっとも印象的なのは、「ホフスタッターの蝶」が見せるフラクタル模様が、実はいつも同じ姿をしているわけではなく、磁場や電子の数(充填率)によってリアルタイムに形を“変えて”いる、という点です。