特に、PD-1阻害剤を用いた免疫療法は、がん治療における大きな進展として注目されています。

PD-1阻害剤は、がん細胞が免疫の攻撃を回避する仕組みをブロックし、患者の免疫細胞ががんを直接攻撃できるようにする薬です。

この治療法は、日本の本庶佑教授の発見を基に2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

この発見により、従来の治療が難しかったケースに新たな治療の可能性が広がりつつあります。

抗がん剤治療の問題点

抗がん剤治療は、がんの進行を抑えたり、がん細胞を縮小させたりする有力な手段です。

しかし、その効果にはさまざまな課題が伴います。

個々の患者にとって最適な治療法を選ぶためには、以下のような問題点を理解することが不可欠です。

がん細胞の多様性

がんは個々の患者や部位によって遺伝的な特徴が異なるため、同じ抗がん剤でも治療効果が異なります。

例えば、肺がんと乳がんではそれぞれ異なる特性を持つだけでなく、同じ乳がんでも異なる遺伝子変異が関与することがあります。

このような多様性により、効果的な治療が難しく、患者ごとに治療内容を調整する必要が生じています。

薬剤耐性の発生

治療を続けると、がん細胞が抗がん剤に耐性を持つ「薬剤耐性」が生じ、抗がん剤の効果が減少することがあります。

一部のがん細胞は複数の薬剤に耐性を持つ「多剤耐性」を示し、治療選択が限られる要因となります。

薬剤耐性は、遺伝子変異や薬剤の排出機能の活性化、DNA修復能力の増加などが原因で、抗がん剤が細胞内に留まりにくくなることが背景にあります。

患者の体質や遺伝的違い

抗がん剤治療の効果は、患者の体質や遺伝的背景にも大きく依存します。

例えば、薬剤代謝に関与する酵素の活性が人によって異なるため、同じ抗がん剤でもある人には効果的に作用し、別の人には副作用が強く現れることがあります。

抗がん剤は必ずしも効くわけではない
抗がん剤は必ずしも効くわけではない / Credit:Canva